私は「従業員の採用」を「従業員教育」とならんで企業活動の中で重視しています。
それは、企業にとって従業員の採用が「大規模な投資」だからです。
最初にお断りしますが、私は「人とモノ」を同じように扱うつもりはありません。
わかりやすくするために以下の文章では「モノ」のように表現することをご容赦ください。
大きな投資だと思うのは、以下の理由からです。
「1.期間が長い 2.金額が大きい 3.活かせれば価値が増加」
1.期間が長い
採用した人の「人件費」は毎年かかります。それは定年まで(再雇用制度があれば、定年後も雇用が終了するまで)続きます。
崩れかけているとはいえ、いまだ「終身雇用制」は日本の雇用慣行として残っています。
従業員の雇用期間は何年間でしょうか。
22歳で就職し65歳まで勤務すると43年間。
例えば、建物の減価償却期間で言えば20年以上の「木造」を大きく超え、「鉄筋コンクリート造」の40年超と同じ。
とても期間が長いです。
2.金額が大きい
就業している期間(43年間)の平均賃金を500万円、退職金を2,000万円と仮定すると
500万円×43年間+2,000万円 = 2億3,500万円
この金額は極端かもしれません。中途入社であれば、もっと金額は少なくなります。
しかし、数年の雇用でも1,000万円を超えます。
毎月20万円、30万円、賞与も加えると大きな金額になります。

3.活かせれば価値が増加
どこにでも優秀な従業員はいます。
その人の価値は給与以上のものがあるとお考えの経営者も多いと思います。
採用した人材を活かすことも殺すことも、その企業・組織次第と言えます。
※活かす方法は従業員教育に記載いたします。
以上のことから、私は「採用」は「設備投資の決定」と同じように考えるべきと思います。
社長や代表者が億単位の設備投資を決める際にどれだけ時間をかけて検討しますか。
どれだけの時間と手間をかけて、その投資の効果や代替手段を検討しますか。
億単位の投資なら、逡巡するし先送りも考えるのが普通だと思います。
もちろん人件費は40年に及ぶ長い期間の投資ですので、キャッシュアウトは少しずつですが、途中解約できません。
最も懸念すべき点にお気づきいただきたいのですが、それは返品や解約できないことです。
人(従業員)は、自分(経営者)の意志で、容易に他人に譲渡できません。
当初期待した性能を発揮しなくても返品や解約はできません。
現在の日本において、解約(解雇)が出来ないわけではありません。
しかし、解約(解雇)に至るまでには、多くの時間と労力、費用もかける必要があります。
ですので、採用にはこれまで以上に手間と時間をかけていただきたいです。
大企業は、新卒者を毎年4月に大量採用していますが、その準備は約1年半前から始めています。
大学生採用であれば、3年生の夏のインターンから始まり、4年になるとエントリーシートの作成、筆記試験、面接試験と時間とお金をかけています。
しかも、採用担当は、優秀な社員が担当することが多く、現場の社員をOB・OGとして紹介するときも優秀な社員を充て、通常の業務を止めてでもOB・OG訪問に専念するよう指示してる会社も多いと聞きます。
ある調査では、新卒一人当たりの採用コストは50万円から90万円くらいとのことです。
2億の投資と考えれば、調査コストが50万円でも妥当ではないかと思います。
中小企業は大企業に比べ資源に限りがあることは承知していますが、それでも採用にはもっと資源を投入して、将来成長していただきたい。
特に今は大企業が採用数や活動を控えています。この機会を逃さずに良い人材を採用する好機と思いますが、いかがでしょうか。
ただし、一言忠告があります。
自社の企業文化とかけ離れた人材や先輩社員よりもずば抜けて優秀で活躍しそうな人材を採用しても、離職される可能性が高いので、その点は十分留意して下さい。