規則見直し

「うちのやり方」と就業規則がずれていませんか

この記事の要点

  • 長く続く職場ほど、規則とは別の慣行が育っている
  • ずれは、関係がこじれたときと、職員の不公平感として表に出る
  • 職員に不利益な変更は、合意や変更の合理性などの要件を確認して進める

「規則にはそう書いてあるけれど、実際は前からこうしている」

就業規則を拝見しながらお話を伺うと、こうした場面によく出会います。始業時刻、休憩の取り方、手当の支給条件、休暇の申請方法。長く続く職場ほど、規則とは別の「うちのやり方」が育っているものです。現場がうまく回るように工夫を重ねてきた結果ですから、それ自体を責めるつもりはありません。

ただ、規則と実態のずれは、放っておくと思わぬところで問題になります。

ずれの整理の考え方ずれの整理の考え方就業規則に書いてあること現場で実際にしていること法律・雇用契約を確認どちらに合わせるか決めて周知
ずれの整理の考え方:就業規則に書いてあること/現場で実際にしていること/法律・雇用契約を確認/どちらに合わせるか決めて周知

ずれが問題になるのは、こじれたときです

職員との関係が良好なうちは、ずれが表に出ることはほとんどありません。問題になるのは、退職や処分、未払い賃金の請求など、関係がこじれたときです。

たとえば、規則では支給しないことになっている手当を、慣行として長年支給していた場合、それが労働条件の一部と見なされることがあります。逆に、規則で定めた制度を実際には運用していなかった場合、職員から「規則どおりに扱ってほしい」と求められることもあります。どちらの場合も、職場にとっては説明に苦労する状況です。

ずれは、職員の不公平感も生みます

ずれのもう一つの問題は、職員の間に不公平感を生むことです。ある部署では認められていることが、別の部署では認められていない。前の上司は許可してくれたのに、今の上司は許可してくれない。ルールが人によって変わる職場では、職員は安心して働けません。

私は医療機関で人事を担当していたころ、規程に定められていない通勤経路や手当額、特別休暇などの取り扱いを整理し、職員に周知することに取り組みました。ルールが明確になれば、職員は安心でき、管理職も迷わずに判断しやすくなります。

ずれを見つけたら、どちらに合わせるかを決める

ずれを見つけたら、まず法律、雇用契約、これまでの運用を確認し、規則を実態に合わせるのか、実態を規則に合わせるのかを検討します。ただし、手当の廃止や休暇の縮小など、職員に不利益となる変更は、経営者が決めて知らせるだけでは足りません。原則として本人との合意が必要で、就業規則の変更による場合にも、変更の合理性や周知などの要件を満たす必要があります。変更の理由と影響を説明し、必要な手続きを確認しながら進めます。

荒井社会保険労務士事務所では、就業規則と現場の運用が食い違っているという不安をお持ちの方に、規則と実態の照合と、その整理の支援を提供し、その不安を取り除くお手伝いをしています。

今日からできること

管理職の方に「規則とは違うけれど、慣例でこうしていること」を三つ挙げてもらってください。それが、最初に整理すべきずれです。

よくある質問

Q. 慣行として続けている手当も労働条件になりますか?

A. 長年続いている慣行は、状況によっては労働条件の一部と見なされることがあります。廃止などを検討する際は、個別に確認が必要です。

Q. 規則と実態、どちらに合わせればよいですか?

A. 現場の工夫が理にかなっていれば規則を改め、そうでなければ運用を正します。職員に不利益となる変更は、本人の合意や変更の合理性などの要件を確認しながら進めます。

この記事を書いた人

荒井 紀洋(あらい のりひろ) 社会保険労務士・採用定着士

荒井社会保険労務士事務所 代表。医療機関で約12年間、人事・労務を担当し、人事・経理課長、事務長、事務局長を務める。2020年に事務所を開業し、医療・介護・中小企業を中心に、労務管理、人事制度、組織づくり、採用・定着の支援を全国で行っている。

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